相続が発生し、被相続人が債務整理をできておらず、借金がある場合、相続人が相続放棄をしない限りその借金の返済義務を負います。
しかし、借用書がなく、お金をを貸したという人が請求に来た場合、民法で定められた相続人は返済する義務があるのでしょうか。当記事では借用書がない場合の借金の返済義務について注意点や抑えるべきポイントを具体的に解説します。
目次
借金がある場合は相続人に返済義務がある
相続人はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎますので、借金がある人は債権者から債務の弁済を請求されることになります。相続人が自分がした借金ではないからと、借金があることを知っているにも関わらず支払いを怠っていると、財産の差し押さえをされる可能性もあります。
債務について確かに被相続人のものであると確認できた場合は、次に引き継いだ相続人が法的に負担する必要があります。相続人間で財産の配分とあわせて誰が負担するかも合意して、返済する必要があります。
相続財産を誰が相続するか、結論を出してから後で借金の負担する人を決めるとトラブルになるケースがあるため、借金を負担する人が多めに現金をもらっておくなど、遺産分割協議書が完成する前にしっかりと話し合っておきましょう。
借用書がない場合でも契約は成立する
住宅ローンなどでお金を金融機関から借りる場合は不動産などを担保にし、金銭消費貸借契約などの契約を文書で交わし返済を行います。
個人間のお金の貸し借りは書面は作らず、相手方と口約束で行うことも多いでしょう。法律上は借用書の作成が行われていない場合でも契約自体は認められており、契約は成立します。そのため、借用書が無くても、借主が亡くなった場合は相続人に返済義務が移ることになります。
借金の返済義務は財産を相続する権利がある相続人に移りますので、相続人に直接返済を要求することが可能です。
借金の有無は貸主が証明する必要がある
友人・知人などにお金を借りていて借用書がない場合でも、相手から借金の返済を要求されれば相続人は支払う義務があり、債務者は債権回収をする権利があります。しかし、当然のことながら親の代わりに返してほしいといわれても親が借りていなければお金を子供が返済をする必要はありません。
借用書がない場合はお金を貸している人は借金の存在や返済の方法や時期について証明する必要があります。通常は個人間でお金を貸した際に期日やどのように返していくかや担保にとっているものをどのような条件で返還するかを検討して約束するはずです。
銀行口座の通帳で金銭を振込して受け渡しされていることが立証できても、贈与の可能性もあるため、必ずしも借金をしている証拠とはなりません。そのため、書類がない場合はICレコーダーなどを利用してやり取りを録音でもしていない限り、口頭で行った契約の借金の金額や返済方法や借りるための条件などを決めていた詳細の事実を法的に証明することが問題となることが多いです。契約書が無くても金銭の貸し借りの契約は法律上有効とはなりますが、証明する手段は限られており非常に難しいでしょう。
また、借金の時効は民法で決められており、令和2年の改正前に発生した借金は10年、法律の改正以降に発生したものについては5年となります。期間が経過しても返済を求めるために支払督促の内容証明郵便などを相手方に送付している場合は督促の意思があるものとして時効が中断します。最後に督促された時から期間が経過すれば、時効を援用することで効力を発揮し、借金は消滅します。
トラブルになりそうな場合は専門家に相談を
被相続人の借金の返済について債権者から相続人が返済を求められているケースは多くあり、当事者同士の交渉で解決できない時は訴訟に発展するケースもあります。借金を引き継ぐ人も遺産分割協議の中で決める必要がありますので、財産を調査した時点で内容と評価額を一覧にして分割方法について他の相続人と話し合いを行い誰が借金を承継するか決めるようにしましょう。
借金がある場合、貸主と家族の間でもトラブルになることが多く、裁判になると判決がでるまでかなりの時間がかかるため負担も大きいです。
自分で対処法がわからないなどお悩みがある場合は法務のプロである司法書士や弁護士等が所属する法律事務所にも相談し、慎重に対応することをおすすめします。知識と経験がある専門家に対応してもらうことで費用はかかりますが、専門家に相談することでさまざまな注意点をふまえて、適切な判断のうえ安心して手続きを進めることができるというメリットがあります。借金がある場合は、自分で判断して、安易に行動をとらないことが大切です。
借金の返済を求められている場合はまずは専門家に相談してみることが重要です。初回の相談は無料で応じてくれるケースもありますので、電話やメールなどで専門家にお気軽にお問合せしてみるとよいでしょう。