相続が発生すると、相続人は財産を相続することになりますが、引き継ぐ相続財産はプラスの財産だけではありません。
マイナスの財産がある場合は相続放棄を選択することも可能です。また、マイナスの財産には相続発生時に被相続人が負っている損害賠償責任なども含まれます。
損害賠償責任には、鉄道への飛び込み自殺等の行為によって、人身事故を起こし鉄道会社に負っている責任なども含まれます。当記事では電車の飛び込みなど故意や過失により、親族が亡くなった場合にとるべき遺族の対処方法について解説します。
目次
法定相続人は損害賠償責任の放棄が可能
法定相続人は民法上の損害賠償責任を相続することになります。線路への飛び込みなどによって被相続人が亡くなった場合、鉄道会社に、事故により列車を破損した場合の修理費や遅延損害金や乗客の振替輸送にかかる費用、トラブルに対応するための人件費など高額の賠償責任を負うことになる可能性があります。
損害賠償責任については相続放棄をすることも可能です。相続放棄をすることで、死亡した本人に代わって鉄道会社の損害賠償責任を負うこともありません。
相続放棄をする場合の注意点
大きな損害賠償責任を負っている親族が亡くなった場合、相続放棄を選択せざるを得ないこともあるでしょう。次に相続放棄をする場合の注意点について具体的に解説します。
他の順位の人に相続権が移る
相続には順位があり、相続放棄をすると法律上、次の相続人に相続権が移ります、
相続の順位は配偶者が常に相続人、子供・孫などの直系卑属が第一順位、親・祖父母などの直系尊属が第二順位、兄弟姉妹・甥・姪などが第三順位となります。
相続放棄があった場合、次の順位の人が権利と義務を引き継ぎます。連絡をしなかったことでトラブルが生じる事例も多いので、次の順位の人が鉄道会社から損害額の請求をされ困らない様に、他の親族にも状況を伝えてから放棄をする様にしましょう。
他の財産を相続することができない
相続放棄をした者はすべての相続権を失って初めから相続人ではなかったことになります。
そのため、損害賠償の支払いは免れることはできますが、財産を選んで一部でも相続するということはできません。
同居している自宅が被相続人名義であった場合でも相続することはできませんので、家も転居する必要が生じるケースもあります。
元々保有していたプラスの財産と損害賠償額の金額がどちらが大きいか、預貯金や不動産、金などの財産の一覧の表を作成し、確認してから判断する必要があるため、司法書士などの専門家に相談する様にしましょう。
相続放棄の方法
相続放棄をする場合、相続発生から3カ月以内に検討して家庭裁判所で相続放棄の申立てを行う必要があります。家庭裁判所には相続放棄の申述書と戸籍謄本、800円分の収入印紙などが必要となります。
実際に手続きをしないまま3カ月の熟慮期間を過ぎてしまった時、特別な事情がない限り、期限を伸長することはできません。そのため、相続放棄を行わなければ、配偶者や子などの家族は相続放棄をすることは認められず、遺産を引き継ぐ権利と借金などマイナスの財産を引き継ぐ義務が生じ、遺産分割を行う必要があります。
相続発生後は何かと忙しくあっという間に時間が過ぎてしまうので、期限に遅れてしまわないように、自分で日程を注意して確認しておきましょう。
判断に迷う場合は専門家に相談を
今回紹介した事例のように、債務や損害賠償責任が生じているなど、複雑で判断が難しい事例では自分で判断せず、専門家にサポートを依頼するようにしましょう。清澤司法書士事務所では、皆さんの相続に関するお悩みを解決しています。数多く相談を受けており、問題の解決のお手伝いをしていますので、あらゆるお悩みに対応することが可能です。
相続に関してはさまざまな期限もあり、スピーディに対応する必要がありますので、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の執筆・監修
清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所/中野リーガルホームの代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。