連帯保証人となっている人の相続人は相続放棄ができる?

相続が発生すると遺された配偶者や子が財産を相続することになります。借金などの債務がある場合も遺された家族が相続することになりますが、相続放棄をすることで、他の財産も引き継ぐことができませんが、借金を相続することから免れることができます。

では保証人や連帯保証人になっている場合も放棄をすることはできるのでしょうか。具体的に確認していきましょう。

目次

保証人・連帯保証人とは

保証債務を引き継ぐ可能性がある場合、少なくとも保証債務に関する知識がないと適切な対応をすることはできません。まずは保証人、連帯保証人がどのような義務があるか解説しますので参考にしてください。

保証人とは

保証人とは借り入れをしている主たる債務者が返済できなくなった時に代わりに債務を返済する役割を持つ者のことです。ただし、保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権、分別の利益があります。

催告の抗弁権とは債権者が保証人に対し、借金の返済を求めても、主たる債務者に十分な請求を行った後に保証人に請求を行うよう主張できる権利です。また、検索の抗弁権は主たる債務者に返済原資となる財産が無いか十分に探してから保証人に対し、請求するように主張することができる権利です。

分別の利益とは保証人が複数いる場合、債務の額を保証人で割った金額が1人あたりの保障額の最高額となり個人としては債務の一部を負担するというものです。例えば、300万円の借金で保証人が3人のケースでは1100万円ずつ保証することになります。

保証人は催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益を主張することが可能ですので、あくまで債務者があらかじめ決められた期間内に支払うことができなくなった場合に代わりに返済する義務が生じるということになります。

連帯保証人とは

連帯保証人には先ほどご説明した、催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益がなく、債務者は直接連帯保証人に返済の請求をすることができます。そのため、連帯保証人になっている場合は、法的には自分が借金していることとほぼ同じような責任をとる状態となり、連帯保証を引き継いだ人は債務について自分で支払って返済することになります。

連帯保証人になると自身も主たる債務者と同じ負担を負う状況になってしまい、その分負担やリスクも大きくなります。契約書をしっかり読んで、慎重に検討してから承諾する必要があります。

保証人・連帯保証人になっている場合の対処方法

亡くなった親や兄弟姉妹が保証人・連帯保証人になっている場合、どのような対処方法があるのでしょうか。対処方法や注意点について具体的に解説していきます。

相続放棄

被相続人が保証人、連帯保証人になっている場合で、引き継ぐ遺産よりも債務の方が大きい場合、家庭裁判所に相続放棄の書類を提出することで、不動産や預貯金等も含めて一切の財産を放棄することができます。

相続放棄をした場合すべての財産を引き継ぐ権利を失います。配偶者が被相続人名義の自宅に住んでいた場合、他のところに引っ越す必要があります。プラスの財産の額と保証額を確認し、状況に応じて判断するようにしましょう。

相続放棄の期限は被相続人が亡くなった日の翌日から3カ月以内です。期限が短いため、早めに対応をするようにしましょう。また、相続放棄は単独で行うことができますが、相続放棄をすることにより、他の相続人が財産や後順位の親族が保証債務を引き継ぐ割合が大きくなり、負担することになります。他の相続人に迷惑がかかることがないように、相続放棄をするなら放棄をする前に判断して早めに伝えるようにしましょう。

限定承認

被相続人の財産を知っていたなら放棄の判断をすることができますが、財産が分からない場合判断することも難しいでしょう。

調査をしても死亡時点の被相続人の遺産の内容が詳細に分からず調べることも難しい場合、限定承認という方法をとることができます。限定承認とは被相続人のプラスの財産の範囲で借金などマイナスの財産の支払いをする制度です。限定承認は相続財産の内容が分からない際にメリットがある制度といえるでしょう。

限定承認も相続放棄と同じく、3か月以内に家庭裁判所に書類を提出する必要があります。限定承認は相続人全員で意思統一をして行う必要があります。相続人同士がそれぞれ遠方に住んでいる場合も多く、電話やメールで話し合いをしても進まない可能性があります。相続人間でトラブルになる可能性も十分に考えられますので、限定承認を検討する場合は早めに連絡をとり対応を検討するようにしましょう。

保証人・連帯保証人になっていることを知らなかった場合

生前に被相続人との関係が希薄で負債があることや保証人や連帯保証人になっていることを知らなかった場合もあるでしょう。しかし、借金について認識がなかったとしても、熟慮期間である3カ月経過後は原則相続放棄や限定承認は認められません。

錯誤などが問題となり、期日を後ろ倒しにすることできる可能性はありますが、例外的な対応となり、簡単なことではありません。また、引き継がれた財産を処分した場合は単純承認をしたとみなされます。そのため、財産を処分した場合は相続放棄や限定承認をすることはできなくなってしまいます。

相続発生から3カ月経過後や財産を処分した後に相続放棄をしたいなど相続に関するお悩みがある場合は、経験豊富で相続関連の知識に詳しい司法書士等の専門家にサポートを依頼するようにしましょう。正式に契約を行うと費用がかかりますので、事前に報酬については確認しておくようにしましょう。

保証債務がある場合の遺産分割の注意点

保証人や連帯保証人となっており、保証債務がある場合どのような点に注意をすればよいのか、解説していきます。生前に遺言が書かれていない場合、相続人全員で話し合いを行うことになりますが、事業や不動産などに紐づく保証債務であれば、対象となる事業や財産を引き継ぐ人が承継するケースが多いです。

相続放棄や限定承認までの期間は3ヶ月であっという間に時間が過ぎてしまいます。また、不動産の登記や金融機関の名義変更など関連する手続きも行う必要がありますし、相続税の申告期限も相続開始から10ヶ月と短い間でさまざまな期限が到来しますので、早めに遺産分割協議を成立させておく必要があります。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所/中野リーガルホームの代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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