公正証書遺言に納得いかない場合の対処法とは

親等が亡くなり、相続が発生した場合、被相続人が保有していた財産の遺産分割を行う必要があります。遺言書が遺されていた場合は基本的に遺言書に記載されている方法に従い遺産を配分する形となります。しかし、遺言書の内容に納得がいかない場合もあるでしょう。

作成時に効力が発生している公正証書遺言があった場合でも遺言の内容を覆すことができるのでしょうか。当記事では遺言書の内容から変更できるケースについて解説します。

目次

公正証書の遺言とは異なる配分とできるケース

どのようなケースで遺言書とは異なる配分をすることができるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

遺留分を侵害されているケース

遺留分とは配偶者、子、両親に認められている最低限の相続財産を相続する権利のことです。遺留分を侵害されている者は遺留分侵害額請求を行えば、遺言があったとしても、遺留分相当額の金銭を請求することが可能です。

遺留分侵害額請求には時効があり、遺留分が侵害されている人が、侵害されていることを知った時から1年以内となります。遺留分を侵害されていることを知らなった場合、相続発生後1年以上経過していても認められるケースもあります。

代々、次の世代に残してきた不動産や事業を行っている場合、事業を存続させるために遺留分を侵害せざるを得ないケースもあります。事業を引き継ぐ長男が多くの財産を承継するというケースも多いですが、その場合は他の相続人の取り分が極端に少なくなってしまうため、事前に説明していただくなど対処法を検討しておく必要があるでしょう。

遺言自体が無効となるケース

遺言書の作成手続きをする際に、認知症などの健康上の理由で意思能力が問題となるケースや、特定の第三者に強要されて意思表示をさせられて遺言を作成したケースでは遺言書自体が無効となるケースがあります。

ただし、公正証書遺言は公証役場で公証人が証人2人立ち合いのもと本人の意識確認を行って、その場で遺言者が口述した内容を公証人が筆記することで作成した時に有効と認められて遺言書として成立しています。

また、自筆証書遺言のように日付の記載や署名・押印がないなど、書き方や要件・形式的な不備で争いになることはありません。そのため、公正証書遺言を自筆の遺言書と比べると覆すことはかなり難しいでしょう。

このようなケースでは裁判で遺言の内容を理解する意思能力があったかどうか、その時の状況が争点となるケースが多く、遺言の内容について判断する能力がなかったことを主張するために医師が出している認知症などの診断書の有無が重要となりますが、死後に遺言者の意思能力を確認することは非常に難しいといえるでしょう。

もし、証拠を得ることができ、訴訟の結果として遺言書が無効となったなら、法定相続分を基準に相続人同士で誰が何を相続するか話し合いを行うことになります。

相続人全員が納得し遺言とは異なる配分を希望するケース

相続人全員が遺言書とは異なる配分とすることを希望する場合は必ずしも遺言書のとおりに分ける必要はありません。遺言書の全部や一部を対象に変更して手続きを進めることも可能です。

遺言で遺贈する内容を指定されている受遺者だけでなく法定相続人全員で合意をする必要があります。それぞれの考えがあり、異なる配分とすることには合意したとしても、どのような配分で分けるか合意できない場合もあります。兄弟姉妹のうち一人でも合意できない人がいる限り、家庭裁判所での調停や審判に進みます。訴訟を起こすとなるとなかなか手続きが進まない状態となるので注意しましょう。

遺言と異なる内容の遺産分割は許されない?
https://www.tokyoto-souzoku.jp/souzoku-column/20180715/4817/

遺言書と異なる配分を希望する場合の注意点

遺言書と異なる配分を希望する場合どのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

相続人同士の関係が悪化する可能性がある

遺言書と異なる配分を求めたことが原因で、相続人同士でのトラブルが大きくなり、関係がさらに悪化するリスクがあります。相続でトラブルとなった場合はその後関係が修復しない事例も多々あります。親族の間でトラブルとなる可能性がある点は注意が必要です。直接、相手方と話し合いをすると同意が得られず、進められそうにない場合は弁護士に交渉を依頼してもよいでしょう。

配分の話し合いが長期化する可能性がある

財産の配分に関する話し合いは相続人同士の話し合いで解決できない場合、裁判所での調停や審判に進むケースもあります。相続を受けた後に話し合いが長期化し、数年かかるというケースも多くあります。長期化することで、亡くなった方の財産を名義変更することがなかなかできなくなります。不動産がある場合は管理や固定資産税などの費用も誰かが払う必要がありますので、よく考えてから主張をするようにしましょう。

自宅にある遺言書を破棄しても意味がない

亡くなった方の自宅に保管されている公正証書遺言が自分が取得する割合が少なく納得がいかなかった場合、他の相続人に見つかる前にこっそり書いてある遺言書を破棄してしまおうと考える方もいるかもしれません。

しかし、公正証書遺言の原本は公証役場でまとめて保管されており、自宅にある遺言書を破棄しても原本や他に謄本がある可能性があるため、意味がありません。

また、遺言書を破棄するということは被相続人に対する裏切り行為として、相続欠格となり、相続権を失うと民法891条で定められています。欠格となると、相続人としても資格を完全に失ってしまいますので、遺産相続の際に自分にとって不利な遺言書が見つかったとしても絶対に破棄や偽造はしないようにしましょう。

相続に関するお悩みは専門家に相談を

相続は制度も複雑で法律や感情が複雑に絡み合うため、法的な知識だけでなく、経験値がないとうまく対応を行うことは難しいでしょう。財産の配分について家族間でトラブルになりそうな場合は早めに司法書士などの専門的な知識を持つ人に相談することをおすすめします。専門家に依頼することで、費用はかかりますが、間違えなく対応できるというメリットがあります。

お知り合いに司法書士がいない場合は、清澤司法書士事務所にご相談ください。司法書士にも相続を得意とする司法書士と得意ではない司法書士がいます。ホームページなどで相続に関する案件を数多く取り扱っており、実績のある司法書士を探してみるとよいでしょう。

また、相続発生後は原則、被相続人が死亡した翌日から10ヶ月以内に相続税の申告期限が到来します。相続税の計算は複雑で、相続開始後の短い期間で行うことは経験がない人にとっては簡単なものではありません。

相続税の申告は財産の内容によって報酬が異なりますので、税理士に依頼する場合は事前に預貯金や土地・建物などの財産を調査し、一覧を持って相談に行くと良いのがよいでしょう。しかしながら、この財産調査も骨の折れる作業の一つです。財産調査は、相続が得意な清澤司法書士事務所にお任せください。

これらの理由からも、相続の相談はまず司法書士を窓口とし、その後に税理士につないで財産内容を共有して一緒に手続きを進めていくことをおススメします。清澤司法書士事務所は初回の相談は無料ですし、税理士事務所も初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いので、気軽にご連絡の上、見積もりを確認いただいてから検討してみるとよいでしょう。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所/中野リーガルホームの代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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