相続人の中に遺産分割協議に応じない人がいる場合の対処方法は?

親などの相続が発生すると、相続人全員で相続財産の遺産分割協議を行う必要があります。しかし、遺産分割協議に応じてくれない相続人がいると、遺産を分けることができません。

遺産分割協議等、相続の手続きに応じてくれない場合は、預貯金の名義変更をすることもできません。相続開始後のトラブルの内容や対処方法についてポイントをおさえて解説していきます。

目次

遺産分割協議に応じない理由

遺産分割協議に応じない人はどのような理由で遺産分割協議に参加しないのでしょうか。よくある理由について確認しておきましょう。

相続人間の関係が悪化している

相続人間の関係悪化が問題となり、話し合いがまとまらないケースは多いです。相続人同士で顔もあわせたくもない状況の場合、会って話し合っても複雑な心情となり、争いになる可能性が高くなかなか話し合いは進まないでしょう。

一部の相続人が多額の生前贈与を受けている等、特別受益を得ている場合や、被相続人が亡くなる前に認知症となっていた場合等の長年の介護など寄与分がある場合も誰かが不公平に感じ、関係が悪化する原因の一つとなる可能性があります。

相続人間で交流がない

子どもがいない場合で、兄弟姉妹も無くなっている場合、甥・姪が相続人となります。いとこ同士が疎遠で直接会ったこともない場合や長い間会っていないというケースもあるでしょう。連絡がつかない場合や、そもそも自分には関係がないことといって、対応してくれないケースもあります。

他にも戸籍謄本で相続人を調査した結果、認知した子どもがいるケースや前妻と後妻の間にそれぞれ子供がいる場合などもあります。子どもには遺留分という最低限法的に守られている強い権利がありますので、遺言書があっても遺す財産を0にすることはできません。一人でも連絡が取れない人がいると無視して勝手に協議を進めることはできないため、遺産分割協議を実現することが難しくなります。

遺産分割協議で財産を分けられると困る

遺産分割協議に応じないケースとして、遺産分割協議で特定の財産を家族で法定相続分通りに分けると不都合が生じる事情がある場合があります。代表的な例が自宅に被相続人と同居している相続人がいるケースです。

東京などのアクセスの良い地域にある不動産の場合、保有している現金よりも土地・建物などの不動産の評価が高い例も多くあります。このようなケースでは同居の相続人が自宅にそのまま住み続けると、他の相続人に現金で支払わないと平等に遺産分割ができないという事態に陥ります。相続人が現金で請求された際に支払う財力がないと遺産分割ができないため、応じないというケースもあります。

被相続人に借金がある

被相続人に借金がある場合、関わりたくないという理由で、遺産分割協議に参加しない人も少なくありません。借金がある場合は相続放棄をすれば、債務を引き継ぐリスクはありません。ただし、相続放棄の期限は被相続人の死亡から3カ月と時間がないため、早期に詳細を説明し、期限内に手続きが終わるように分割の協議に参加してもらうよう説得する必要があります。

遺産分割協議に応じない人がいる場合の対処方法

遺産相続の話し合いに応じず、放置している人がいる場合、どのように解決したらよいのでしょうか。次に具体的な対処法を確認しておきましょう。

司法書士や弁護士に相談する

遺産分割協議に応じない人がいる場合、当事者同士では精神的な負担も大きくなるため、司法書士や弁護士など法律の専門家に相談することも選択肢の一つです。

遺産分割の内容について争いはないが、直接連絡を取ることに抵抗があったり、話し合いに応じてくれなかったりスムーズに話が進まない場合は法律の専門家である司法書士が間に入って橋渡しをすることで解決することが多いです。

相続人同士で遺産分割の内容に争いがある場合は、法律の専門家である弁護士に依頼するのが良いでしょう。

また、相続放棄をする事例でも、財産が欲しいわけではなくそれぞれの感情のもつれで合意できていない状態となっていることもあります。第三者である司法書士や弁護士が論理的に状況を説明することで、対応してくれるケースも多いでしょう。

専門家に相談する際は費用がかかるというデメリットはありますが、サポートを受けることで、短い期間で解決できる可能性が高いというメリットがあります。

司法書士や弁護士にも専門分野がありますので、普段から相続関連の業務を行っており、実績のある司法書士や弁護士に相談するようにしましょう。ご自身で解決することが難しい場合やお悩みがある場合は、気軽にメールや電話などで費用について確認し、相談することをおすすめします。

家庭裁判所で遺産分割調停を行う

遺産分割調停とは家庭裁判所で調停委員を交えた話し合いで遺産分割の方法を決めるものです。まず、家庭裁判所に調停の申立を行い、期日が通知され、相続人全員で集まって調停を行うという流れで進みます。

調停委員は双方の意見を聞き中立的な立場でアドバイスを行います。財産の内容や生前にされた贈与により、取得した財産の内容等、あらゆることを考慮して総合的にアドバイスを行いますが、あくまで双方の話し合いで遺産分割を決定します。調停が成立した場合、調停調書が交付され、不成立となった場合や、相続人の中に調停に出席しない者がいる場合は審判に進みます。審判に進むと裁判官が最終的な審判を行います。審判にも出席しなかった場合、過料が課されます。

トラブルを防ぐために遺言書の作成が重要

相続人同士の関係が悪いなど、話し合いができない可能性が高い中で、家族が亡くなってしまうと遺された方は非常に困ります。相続が発生した後に交渉を進めることは想像以上に難しいことですので、事前に遺言書を作成し、対策をしておく方がよいでしょう。

遺言書を作成しておくことで、不動産の登記や預金、株式、投資信託等、金融機関の手続もスムーズに進めることができます。相続税の申告と納税の期限も相続発生の翌日から10ヶ月以内と期限も短いため、特例も利用してスピーディに相続税額の計算と申告手続きを進められるように、事前に一覧の作成と遺言を準備しておきましょう。

ただし、遺言の内容には注意が必要です。遺留分を侵害していると遺留分を主張する相続人がいた場合、遺言通りに配分することができません。そのため、もちろん自分の考えも重要ですが、相続人が納得する形で配分を決めるようにしましょう。

トラブルを回避するために法的に有効と認められる遺言を作成するためには知識も必要となります。形式不備となって遺言自体が無効となった場合、遺言通りに遺産分割が行われない可能性があります。遺言の作成に不安がある場合は、戸籍や通帳などの財産に関する資料を持って専門家である司法書士に相談することも検討してみるとよいでしょう。

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