未成年者や成年被後見人は、単独で法律行為をすることができません。
相続手続きの「遺産分割協議」は法律行為にあたります。そのため、未成年者や成年被後見人は遺産分割協議に参加することができません。
では、相続人に未成年者や成年被後見人がいる場合は、どのように相続手続きを進めていくのでしょうか。
未成年者が相続人となる場合の進め方
通常、父母が法定代理人として子に代わり法律行為を行います。相続手続きにおける「遺産分割協議」は法律行為にあたるため、未成年の子を代理して父母が遺産分割協議に参加します。共同代理が原則なので、父母の2名で代理人となりますが、離婚などにより父(もしくは母)が1名の場合は1名で代理人となり、遺産分割協議に参加します。
しかしながら、相続の場面においては法定代理人である父母と子が同じ相続人の地位にあることが多く、「利益相反(お互いの利益が競合している状態)」となり、父母が子の代理人となって遺産分割協議に参加することはできません。下記パターン➀➁をご覧ください。
子を想う親がほとんどですが、稀にそうでない親もいるでしょう。そのような場面で、親1人で遺産分割を決めることができてしまうと子は守られません。最悪の場面に備え、子を守るためこのような決まりになっています。
子と親が利益相反の関係にあるときは、家庭裁判所に「特別代理人」の選任申し立てが必要となります。子が複数人いる場合は、子1人につきそれぞれ特別代理人の選任が必要となりますので、子が3人いるときは特別代理人も3人選任する必要があります。
特別代理人の選任申し立ては清澤司法書士事務所にお任せください。
未成年の子が相続人なるパターン①
祖母が亡くなり、祖母の子である父が先に亡くなっていて、子が代襲相続人となる場合、母は子の代理人として遺産分割協議に参加することができるのでしょうか??
この場合は、母は祖母の相続人ではないので、子の代理人となり父の兄弟姉妹たちと遺産分割協議に参加することができます。
未成年の子が相続人なるパターン②
未成年の子の父が亡くなった場合、母は子の代理人として遺産分割協議に参加することができるのでしょうか??
この場合には、母と子どもは同じ相続人としての地位にいるため、「利益相反」となります。そのため、母は子の代理人となることはできません。
「利益相反」が生じている場合は「特別代理人」の選任を!
「利益相反」が生じている時は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。特別代理人となる人は特に資格等は必要なく、親戚やご友人などを候補者とすることが多くみられます。しかし、選任は家庭裁判所が行いますので必ずしも候補者が選任されるとは限りません。
下記、選任申し立てについてご案内いたします。
家庭裁判所への選任申し立て
家庭裁判所で特別代理人の選任申し立てをする際は、遺産分割協議案の提出を求められます。この遺産分割協議案の内容は、よほどの理由がない限り、子については少なくても法定相続分は確保したものでなければ、特別代理人の選任は認められません。
※法定相続分についてはこちら
「公平に相続する権利を守ること」が特別代理人の使命だからです。
未成年の子の財産管理は通常親が行いますが、だからと言って不動産を親1名が単独相続することはなかなか認められません。法定相続分どおりの持分で、子と共有で相続しなさいと家庭裁判所から言われるのです。
※理由によっては認められることもあるので家庭裁判所と打ち合わせが必要です。
特別代理人選任申し立ての流れ
- 1
戸籍等提出書類の収集
- 2
遺産分割協議書案の作成
- 3
申立書類の準備・作成
- 4
申し立て
- 5
家庭裁判所から照会書が届くため、記載後返送
- 6
審判
- 7
審判確定・選任審判書到着
特別代理人選任申し立てをするための費用
●実費
子1人ごとに・・・
・収入印紙 800円
・切手代 2000円
・戸籍等の必要書類の取得費用 数千円
※管轄の家庭裁判所への要確認
●清澤司法書士事務所の申立書作成報酬
8万円~
※通常、相続登記(¥98,000~)と同時のご依頼となるため詳しくはお問い合わせください。
成年被後見人が相続人となる場合
成年被後見人が相続人となる場合は、成年後見人が遺産分割協議に参加します。相続人が認知症ではあるが、成年後見人が就いていないという場合は、ほとんどの場合で成年後見人の選任手続きが必要となるでしょう。
成年後見人の選任申し立ても清澤司法書士事務所にお任せください。
遺産分割協議を進めることを目的として成年後見人の選任を申し立てる場合は、遺産分割協議案の提出を求められるケースが多いです。そして未成年が相続人となる際の特別代理人と同様に、成年後見人におていも少なくとも当該被後見人の取得する財産は、よほどの理由がない限り法定相続分を下回ることできません。成年後見人は、被後見人の財産を適切に管理しなければならないからです。
成年後見人が成年被後見人に代わり遺産分割協議に参加する際は、家庭裁判所の許可は必要ありません。しかし、本人の資産が減るようなことをしてしまうと後見人の善管注意義務違反を問われる可能性があり、後で責任を追及される恐れがあります。
そのため、特に専門職が後見人や後見監督人として協議に参加する場合は、法定相続分の確保は厳格に求められるでしょう。
成年後見人選任申し立ての流れ
- 1
診断書等の手配
- 2
申立類型の選択(後見・保佐・補助)
- 3
申立書類の準備・作成
- 4
申し立て
- 5
審理・審判
- 6
審判確定・後見登記
利用するための費用相場は
●実費
・収入印紙 3400円
・切手代 3000~5000円
・戸籍や診断書等の必要書類の取得費用 数千円
・鑑定費用(必要がある場合のみ)5万~10万円
※家庭裁判所への確認必要
●清澤司法書士事務所の申立書作成報酬
10万円~
※弁護士に申立書の作成を依頼した場合の相場・・・20万~40万円以上
この記事の執筆・監修
清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。