天と地の差が出る遺産分割(代償分割・換価分割)

遺産分割協議において、一番大切なことは相続人の皆さまが納得されること。
しかし分割方法によっては相続税額に大きな違いが生まれることもあります。知らなかったばっかりに損をするのはやめにしませんか?

ちょっと待った!!その遺産分割内容で本当に大丈夫!?

遺産分割協議をする際は、どのような内容にするか十分に気を付けなければなりません。選択を誤ると余計な税金を支払うことになったり、将来の問題につながる可能性があるからです。

遺産分割には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」がありますが、その選択をミスしてしまった場合のリスクを事例とともにご紹介します。今回は「代償分割」と「換価分割」に注目していきます。

「代償分割」「換価分割」とは?

換価分割

不動産や株式などの換金可能な遺産を売却して現金にした後、その現金を分けるという分割方法

<遺産分割協議書例>
「被相続人の不動産甲については、売却し現金化した上で各3分の1の割合で全相続人が取得する。」

換価分割は、亡くなった方名義のままでは売却できず、一旦相続人全員名義に相続登記を入れる必要があります。通常、相続登記は司法書士が担当し、売却仲介は不動産業者が担当しますが、清澤司法書士事務所は売却仲介も行うため手続きが一括スムーズに進みます。

代償分割

複数いる相続人のうち、特定の相続人がその遺産を相続する代わりに、代償金を交付する分割方法

<遺産分割協議例>
「第一条 被相続人の不動産甲については、相続人Aが相続する。
 2 前項の代償として、相続人Aは相続人B及びCに金●●円をそれぞれに支払う」

代償分割では、不動産を相続することとなった特定の相続人は代償金を準備しなければなりません。この問題を見越し、生前対策として同居の子どもに自宅不動産を相続させたい方は遺言書で特定の子どもに相続させ、生命保険を利用して代償金の準備をしましょう。遺言書作成についてや生前対策の提案は清澤司法書士事務所のメイン業務の一つです。

遺産分割する際は相続税にご注意‼

相続税がかかる(相続税申告が必要となる)場合は、遺産分割方法には特に注意しましょう。相続税の計算をする際には様々な特例が用意されており、これらの特例により相続税額を圧縮したり、納税そのものがなくなることが多くあります。その反面、分割方法の選択ミスにより特例が利用できなくなった例は少なくなく、無駄な税金を支払うことになってしまいます。

そして、この特例の中でも多く使われているのが「少規模宅地の特例」です。相続税の特例の中でも大きな控除が期待でき、いくつかの要件をクリアすることで適用可能となります(こちらに関する詳細は税理士の担当となりますため、税理士と連携の上ご案内します)。この条件をクリアすると最大80%減額となるため、この特例を利用することで納税額が大幅に減額される、もしくは納税自体が不要となります(相続税申告は必要です)。そのため、この特例を使えるか否かは大きな分かれ道となるのです。

国税庁HP

下記事例をご覧ください。


被相続人は父(母は15年前にご逝去)、相続人は子ども3名(長男・長女・二男)で、そのうち長男が被相続人と同居していました。この場合、長男のみが不動産を相続することで「小規模宅地の特例」が利用できます(適用要件である「被相続人と同居していた親族」に該当するため)。
そのため長男が不動産を取得すると仮定します。不動産を長男が取得することには他の相続人である長女と二男も賛成していますが、相当の代償金を求めており、いわゆる「代償分割」を選択することになります。代償分割ですから長男はご自分の財布から現金の用意が必要となります(被相続人の生前であれば、この問題を想定して生命保険など何かしら対策をとっていれば、この問題に直面することもなかったかもしれません)。ですが、突然大金を用意することは容易ではないでしょう。

では次に「換価分割」を検討してみましょう。
不動産を現金に換えて分ける場合、売却活動の前提として、相続人全員の名義に相続登記をしなければなりません。そして、3人名義にすると「小規模宅地の特例」が利用できません(長男を除く2名は同居しておらず要件をクリアしないため)。この特例が利用できなければ、相続税額(=課税価格)を圧縮できず、相続税が発生してしまいます。

では、長男1人名義にすることで「小規模宅地の特例」を利用し、後日長男が売却し、その売却代金を相続人で分配するのはいかがでしょうか。残念ですが、その流れは結局のところ「換価分割」とみなされ「小規模宅地の特例」適用から除外されてしまいます。代償金は相続した不動産の売却代金で支払うのではなく、あくまで相続した相続人の個人の財産(ここでは長男自身のお財布)から支払うことがポイントです。

ただの相続、ただの不動産売却じゃない!圧倒的提案力!

この問題はおそらく一般的な不動産屋では気づかない盲点だと思われます。これに気づかず売却活動まっしぐらで問題を想定できないまま遺産分割協議書を作成し、相続登記をやってしまうと無駄な税金を支払うことになるのは相続人です。しかも大金の差が出てしまいます。

今回の問題の解決策としては、下記の提案をし、相続人全員が納得の形かつ相続税の納税なしで無事問題を解決することができました。

解決策

代償分割」を選択します。
まず相続税の面では、長男1人が該当不動産を相続することで「小規模宅地の特例」を利用することができ、節税が可能となります。
次に代償金の支払い問題は、この不動産を担保に銀行から融資を受ける形を提案しました。その融資から他の相続人へ代償金を支払います。不動産を相続した長男は、もともと「近い将来当該不動産を売却する」とのご意向でしたので、その後、売却して融資を完済することとしました。そして1年後、弊所が不動産の仲介を担当し、売却の末、その売却代金で完済することができました。相続手続きから状況を把握している弊所だったからこそスムーズに売却まで終えることができた事案でした。

同じような内容でも、すべてのご相談に今回の解決方法が適するとは限りません。状況が少しでも違えば、ベストな解決策は変わってくるものです。なんとなく似ている事案だから同じ方法でよいと雑な手続きの進め方をすると後々リスクが生じる可能性が高いです。

こういった提案は専門家であっても得意不得意があります。清澤司法書士事務所は、宅建業も営む司法書士事務所ですので、ここまでの提案が可能となっています。自身の利益だけを追い求めている不動産業者に丸め込まれないよう、みなさまの相続と不動産売却をサポートし、みなさまの利益をお守りします。安心してお任せいただける体制を整えておりますので、あなた様のお困り事やご希望をお聞かせください。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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