誤解1<遺言書なんてお金持ちの人しか必要ない>
相続はお金持ちだけの問題ではありません。
右の図は平成26年度の司法統計からのデータです。
家庭裁判所で扱われる遺産分割調停・審判の3割は1000万円以下、4割は5000万円以下の相続財産を巡るものです。
つまり多くは、持ち家・預貯金・その他の資産のプラスαがある一般のご家庭でも生じる恐れのある身近な問題といえます。
遺言書の作成は「争族」を予防する簡単な手段です。少しでも気になる方は作成しておくことをおすすめします。
さらに、財産がいくらだろうと、「相続手続き」という「作業」はする必要はありますので、この作業負担の軽減も遺言書さえあればできますので、お金持ちであるかどうかはあまり関係ありません。
誤解2<遺言書がなくても家族は仲がいいから問題ないよ>
子どもたちも仲がよいし、財産について揉めることなんて考えられないという親御さんは多くいらっしゃいます。
しかし、将来の状況は誰にも予想することは出来ないのです。
失業、病気、子育てなどで相続人の内の誰かがお金を多く必要とすることもあるかもしれません。また、配偶者や親戚などが口を出すこともあります。兄弟だからといってそれぞれ家庭を持っていれば教育や生活にかける費用というのも様々です。
想像もしないことで、仲が良かった家族に亀裂が入ることも珍しくありません。
そして、相続問題によって一度壊れた関係は、ほぼ修復することはないでしょう。
また言い換えれば、仲がいいからこそ遺言書を作って愛する家族が余計な気を使わないようにすることもできます。
亡くなった後に遺言書を読んだ家族は、遺言書に書かれたあなたの『思い』にきっと感謝するはずです。
誤解3<法律どおりに財産を分ければ問題ないよ>
確かに民法上も「法定相続分」というものが決まっており、遺族の方たちもこの通りに分けることもありますが、法定相続分は「目安」にするぐらいと思ったほうがよいでしょう。
財産のすべてが現金や預貯金など簡単に分けれるものなら良いですが、不動産や未公開株など換金が難しいものや、共有にしておくべきでないものが多々あります。
特に不動産はできれば共有にしないほうが良いです。
そもそも共有という状態自体が争いのタネにもなりかねます。 そのため「法律どおりにわければよい」と安易に考えるのは注意が必要です。
誤解4<財産を残すつもりはないから遺言書はいらない>
実際問題として自分が亡くなる時期に合わせて全財産を使い切ることは難しいですし、今後起こるかもしれない病気などに備えて今財産を使い切ることは注意が必要です。
誤解5<いつか作る予定だけど、まだ早いよ>
今作らない人はきっとこの先もなかなか作りません。
また将来、認知症などで判断能力が低下してしまった場合、作れなくなる可能性もありますので注意が必要です。
誤解6<遺言書を作ったら、それ以降その内容に縛られて自分の財産を自由にできなくなるじゃないか>
たとえば、「自宅を○○に相続させる」と書いたとしても、生きている間はこの自宅を処分してもいいですし、改築しても、誰かに貸しても問題ありません。
遺言書に書いたことに縛られる必要は全くないのです。
また、遺言書は一度書いたらそれきりではなく、何度書き直しても法律上は問題ありません。
複数枚ある場合は日付の新しいものが有効となります。
ただし、当然何枚もあると相続人が混乱してしまうので、新しく遺言書を書き直した場合は古い遺言書は破棄するなりしておきましょう。
誤解7<遺言書なんて縁起が悪い>
遺言書は「遺書」ではありません。
死に際にしか書けないものでもないので、遺書とは全く異なるものです。
さらに遺言書は家族円満のきっかけにもなりますので、縁起の良いものという認識をもってもらえればと思います。
この記事の執筆・監修
清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。