遺産整理業務や遺言信託を信託銀行に頼むと損をする?

司法書士がする遺産整理業務や遺言書作成及び執行は何が違うのか?

信託銀行が最近テレビCMやインターネットに「遺産整理業務」や「遺言信託」といった「商品」を宣伝し、富裕層や準富裕層だけでなく、一般のご家庭に向けて商品広告をしています。そこで、「信託銀行がする遺産整理業務や遺言信託」と「司法書士がする遺産整理業務や遺言作成及び執行」は何が違うのか?ということを今回はご案内したいと思います。

やることに違いはないが、手続き費用が大きく違う

遺産整理業務に関して

 

信託銀行を窓口にした場合、信託銀行の仲介手数料のほか、下請けの士業の手続き費用や場合によっては何とかコンサルタント料なるよくわからない費用が請求されることもあるとかないとか。

 

司法書士事務所が窓口になって税理士等を紹介する場合は、紹介料は受け取りません。そもそもキックバックは厳しく禁止されている業界のため受け取ると懲戒になります。

上記のイメージ図だけでもわかるように、役所等での手続きをするというやることに違いはありません。 ですが、相続の手続きにおいては司法書士や税理士にしかできない業務がありますので、信託銀行に依頼をすると費用が2重(信託銀行と下請け士業)にかかります。

また信託銀行は窓口となったり、遺産分割協議書や財産目録は作成するかもしれませんが、
司法書士事務所が窓口になったほうが士業間のやり取りはスムーズですし、法律文書である遺産分割協議書や財産目録などの各書類の作成は得意としております。
もちろん銀行の預貯金の手続きや株式等の各種証券の手続きも司法書士はできます。
(信託銀行の場合自行の手続きのみで、他行の預金の解約はやらないことがあります。)
つまり、はじめから窓口を司法書士事務所にしたほうが、安価にすみ、業務もスピーディーにこなせるということです。

遺産整理業の費用に関して

ほとんどの信託銀行の遺産整理業務の最低報酬は100万円以上です。
この最低報酬プラス下請け士業の費用がかかるため、実際の支払金額はどのお客さまも驚かれております。(「当事務所の遺産整理業務の費用」)

業務の速さに関しても、例えば以下の違いがあります。

  • 戸籍の収集
    司法書士の場合:「職務上権限」といって、委任状がなくても必要な戸籍であれば取得できます。
    信託銀行の場合:委任状をいちいち貰わなくては取得ができません。
  • 他士業とのやり取り
    司法書士の場合:懇意にしていたり、提携にしている税理士等にコンタクトを取りつつ業務をおこなう。
    信託銀行の下請け士業間の場合:元請の信託銀行の顔色を伺いつつ業務をするので士業間のコンタクト・コミュニケーションが取れていないことがほとんどです。

遺言信託に関して


お客さま→信託銀行(多額の広告費、多くの行員の給与)→公証役場
お客さま→司法書士事務所→公証役場

どちらの場合も公証役場で手続きをします。
証人の2人も信託銀行が用意したり、司法書士が直接なったりします。

遺言信託の費用に関して

では何が違うのか?といいますと、これもやはり費用がまったく違います。
司法書士事務所の場合は10万円が相場ですが、
信託銀行は30万円以上と各行のホームページにも記載があります。

他に信託銀行の場合は「保管料」というものが毎年かかります。
(そもそも公証役場という公的な機関で半永久的に安全な管理の下、無料で保管がなされるのに、なぜか信託銀行では保管料が必要です。)

そして、実際「遺言執行」になったら、上記の「遺産承継業務」と同じく、最低100万円以上からの手続き費用と、下請け士業の手続き費用も発生するので2重にかかります。

ちなみに、ここでいう「遺言信託」という商品。
最近新しい財産承継の形としてご提案の一つにもなる「民事信託・家族信託」でいう信託法にのっとった「信託」ではありません。
なぜか遺言書の作成・保管・執行のことを「遺言信託」という名称で商品としています。

ではなぜこうまでして信託銀行が「遺産整理業務」や「遺言信託」を商品として開発し、莫大な広告費を使い、売り始めているのでしょうか?

答えは富裕層や準富裕層だけでなく「一般のご家庭のお客さまへの販路の拡大と囲い込み」が一因にもなっているそうです。
少子高齢化により相続のマーケットが大きく開けてきたことや、昨今の超低金利の時代のため単に融資業務だけでは利益率が悪いこともあり、様々な商品を開発するという「企業努力」をしているわけです。(この企業努力がお客さまの利便性のためなのか、自社の利益追求に対してのためなのか、はあえて書きませんが。。。)

ですがここまで書いても、お客さまによってはやっぱり「信託銀行」というカンバン・ブランドが立派なため、またはいくらお金がかかってもVIP扱いをしてくれるから、などの理由で信託銀行を選んだり、もしくは上記のような「実体」がわからないまま「遺産整理業務」や「遺言信託」という商品を買わせてしまうこともあります。

どのような商品を買うにしても「ご利用は計画的に
(なにはともあれまずは司法書士に相談するのが一番ですよ♪)

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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